当社農場は大津町の南方、白川の辺りに近い農地の一角にあります。町域の平均気温は15℃〜17℃。施設内は夏季は日中40℃前後〜夜温22℃と寒暖差があり湿度も低いため苗が徒長しにくい環境です。(冬季は温湯ボイラーにより13℃の最低温度を維持します) JR大津駅、幹線道路、高速道路のインターチェンジ、空港など交通の要所が比較的近傍に揃っており、交通至便性にも恵まれています。 育苗設備は1.2ha・13連棟の育苗ハウスが敷地の南北に中央通路を介して連結されています。
このハウスは用土供給や播種設備、接木室・養生室・種子庫などの建屋も内包しており、培土供給から二次育苗に至る全工程が育苗ハウスの内部で完結します。同じく、施設の西端に出荷ヤードが連結されており、ハウスから直接苗を搬送して積込むことができます。
また、平成30年には第3農場を増設。同年夏季より育苗を開始しています。こちらは天井・サイド巻き揚げ式の29連棟ハウスで農場面積1ha。約30万本の栽培が可能で、主に春季後半〜初秋の農繁期に稼働しています。
育苗工程の流れと仕事について
接ぎ木の技術も含め、安定した品質の苗を作るのは容易ではありません。苗という個体差のある生き物を環境差や気象の変化があるなかで確実に育てていくには、全ての育苗工程において細心の注意を払う必要がります。
当社では育苗工程をゾーニングして、それぞれの部署に専任者を置くことで、きめ細かで行き届いた育苗管理を実現しています。一見すると工業的ともいえる人員配置ですが、専任者が専門技術の研鑽に集中しやすい環境を作り出すだけでなく、作業の効率化にも繋がっています。
ここでは受注から出荷に至る一連の工程を写真を交えて簡単にご紹介します。
受注 / 育苗指示
当社では育苗に特化した生産管理システムを導入しており、グループ全社がリアルタイムで情報を共有/管理しています。
お客様から頂いたご注文はデータベース化された育苗日数をもとに播種から納品までの工程日数を算出。各部署に指示書を発行した上で作業に取り掛かります。
万が一気象状況などで工程日数にずれが生じた場合は管理技術で生育を制御します。経験と勘だけに頼らず、長年蓄積したデータも併用した育苗管理によって良質な苗を安定的かつ効率的に生産します。
培養土と用土供給ライン
当社グループでは年間約3,500トンの土を使用します。この土は徳島県にある専用施設で製造された自家製で、植物由来の堆肥に蒸気消毒を施した後、肥料を配合し作られています。通気性・透水性・保水性に優れ、重量が軽いのが特徴です。
当社では育苗トレー、育苗ポットそれぞれ専用の用土供給ラインを備えており、最大でセルトレー:毎時350枚、9cm育苗ポット:毎時8,000本分の供給が可能です。9cmポット用ラインにはパレタイザーも装備されており、作業効率化と負担軽減を両立しています。
播種ライン
播種専用の機械を使い、育苗トレイ(プラグトレイ)に効率的に種を播いていきます。
播種後は、覆土・灌水し、「発芽室」に入れて管理。種の発芽に適した環境を作り出すことによって、確実で均一な発芽を実現しています。
初期育苗
「発芽室」よりハウスに苗を出し、接木するまでの初期の育苗管理をしていきます。ここで接木しやすいしっかりした強い苗にできているかどうかがとても重要。この時点での苗の良し悪しでその後の苗の生育が決まる非常に重要な工程です。
当社では、きめ細かい管理を実施、失敗しない安定した苗作りを実現しています。
接木
農繁期では1日最大5万本もの苗を、熟練の接木スタッフが1本1本すばやく丁寧に接木していきます。この接木の出来栄えで、接木苗の品質の半分以上が決まります。当社の心臓部ともいえる最も重要な工程の一つです。
接木された苗は、温度・湿度・照度・炭酸ガス濃度等を人為的に制御した「養生室」で管理します。この中で、接木によるストレス回復と接合部の活着を促します。
養生が終わると苗はハウスに移され、徐々にハウスの栽培環境に慣れさせる順化の行程に移行します。
二次育苗
順化が完了した苗は1本1本丁寧にビニールポットに移植されます。移植が終わった苗は株間を空けるスペーシングの処理を施され、しっかりと引き締まった苗に育ちます。
このように手間かける一方で灌水調整などで適度にストレスを与え、定植後の環境変化にも耐えられる強い苗に仕立てていきます。
出荷
出荷時にはかたちの揃った良い苗を選抜して丁寧に詰めや挿し替え作業を行います。
出荷準備が整った苗は専用の運搬台車に載せ出荷ヤードに搬送。専任のスタッフにより苗の最終検品〜箱入れを経てトラックに積載されます。
近郊エリアは自社トラックによる納品、遠方や大ロットの場合は外部チャーター便や宅配便による配送にてご対応させていただきます。